大学を卒業後、公立高校での勤務が始まりました。2校目に異動した頃、転機がありました。経産省「未来の教室」実証事業である「Hero Makers」に参加したことです。運営されていたのは、白川寧々さん(以下、寧々さん)。寧々さんは、「教員こそが日本を牽引するグローバルリーダーに」と言っていました。このメッセージが、私にグサッと刺さりました。学校では生徒に「グローバルリーダーになろうね」と言っているのです。にもかかわらず、私は英語教師として「自分はグローバルリーダーだ!」と思ったことはなく、胸を張って言えるわけでもありません。周りから「教員は、グローバルリーダーになるべきだ」という期待を感じたことも、ありませんでした。だから、寧々さんのメッセージは衝撃でした。寧々さんは、英語を身につけた先の世界を見せてくれました。
Hero Makersでは、グローバルに活躍する起業家がゲストスピーカーとして、彼らの見ている世界を教えてくれました。堂々と自分の世界観を話す姿に、強烈に憧れました。私も生徒に、英語が話せたらどんな世界が待っているのか、見せられる教師になりたいと思うようになりました。Hero Makers一期を終えた2019年5月「留学しよう」と決めました。寧々さんにメッセージをすると、「その旅にお付き合いします」と返事をもらい、海外大学院への出願準備が始まります。
なぜ、寧々さんのメッセージがこんなに心に残ったのか、考えてみました。私は、高校生の頃、千葉大学の推薦を受けようと英語の先生に相談したら、「えっ」と言われました。表情から「あなたが受けるの?」というメッセージを受けとりました。ハーバード、スタンフォードに行きたいと大人に話した時も、「止めといた方がいいよ。家庭も仕事もあるし」とマイナスな反応をする人に、たくさん出会ってきました。テレビやネットでは、誰かの失敗を笑ってばかりです。なぜ多くの大人は、挑戦に対して「無理だ」と言うんでしょう?挑戦を否定する側に回れば、失敗したときに「ほらね。無理だったでしょう」と言えるからです。誰かの挑戦を否定して、挑戦しない自分を正解にしています。学校や社会は、どんどん息苦しく、不寛容で、生きづらくなっています。私は、「なんで大人は自分が挑戦せずに、人の挑戦を笑ってるんだ」と思っていました。
私は、留学をしたことはないし、英語もへたくそです。TOEFLも受けたことがありませんでした。そんな私に対して、寧々さんは、「大学院に行くと、こういう世界が待ってるよ」とか、「こんな素敵な人に出会えるよ」とか、教えてくれたんです。大人とは、次の世代の人に、素敵な世界が待ってることを、背中で見せてくれる人のことだと気づきました。そういう大人になりたいなと思って、大学院への受験を決めました。