2020年度はアメリカの受験と並行してEMBLへの出願も行なっていました。書類の締切は10月半ば、最初のZoom面接が11月末、1月末から2月初めにかけてさらに面接がありました。書類を提出するときは少し軽い気持ちだったのですが、選考過程を経るにつれて、今の自分にはEMBLが最適だと思うようになりました。面接の内容はお話しできませんが、私が魅力的だと感じた点をいくつか挙げさせていただきます。大前提として、研究レベルに関しては、ジョンズホプキンス大学もEMBLも世界トップクラスであり、本当に面白い研究がたくさん行われています。純粋に研究のみの観点からではどちらかを選ぶのは難しかったと思います。
まず、EMBLの出願書類に関してですが、全て簡潔にまとめるよう字数制限が厳しく、かつ「お気に入りの論文とその理由」や「普段どのように論文を読んでいるか」などの質問から研究者の性質を評価された印象が強いことに惹かれました。また、EMBLには2つの研究室間での研究を行う研究員のポジションが用意されるなど、共同研究を強く推進する風土もあります。このような、自分の好きな研究について気軽に議論し、学際的な研究を始める機会の多い環境で研究をしたいという思いも強く持っていました。
さらに、メンターとなるSinem Saka博士は1月からEMBLで新しく研究室を開始しました。立ち上げ時期の研究室に参加できることはとても貴重な体験であると同時に、充実した指導を受けられるという期待もあります。深く掘り下げませんが、以前からSaka博士の論文は読んだことがあり、もちろん研究の興味という点でも合致していると感じました。
留学生としての視点を付け加えると、EMBLの選考は全てが明快、公正で応募者に優しいと感じた点もあります。「出願前に受入希望先の先生とコンタクトを取ることは推奨されない」、「応募者は奨学金の有無等ではなく、qualificationとscientific potentialのみに基づいて評価される」などの表記が公開されており、面接の結果を通知する日も指定してくれていました。特に結果通知日の指定は、アメリカの大学院からの合否通知を待ち続けた挙句全て不合格だった経験をした身としては非常にありがたく、このような対応をしてくれる機関で研究をしたいと強く感じました。また、上述の通りアメリカの大学院では(少なくとも私の分野では)internationalの学生の数が限られていることが多かったですが、EMBLはそもそも研究機関がinternationalで、選考にも国籍は一切関係ないため、多様な背景を持った学生/研究者たちが集まっています。個人的に、研究者コミュニティにおけるdiversity、equity、inclusionなどの問題にも興味を持ち始めたため、より多様性を感じたEMBLで博士課程を過ごすのも良いと感じました。
最後に、自分のキャリアや性格を考えた際に、EMBLの博士課程は最大で4年だという点も重要でした。私自身は既に数年研究の経験をしているため、アメリカでlab rotationを含めた平均6年程度の博士課程に進学するより、EMBLで4年程度で学位を取得し、また少し異なる分野の研究室に行くのが適していると感じました。ずっと行きたかったアメリカにも博士研究員として行きたいと考えています。